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イット・フォローズ/逃れられない”それ”の正体

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イット・フォローズ(It Follows)R15+

監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル

出演:マイカ・モンロー、ケール・ギルクリスト、ジェイク・ウェアリー

製作:アメリカ/2014

時間:100分

  昨年の年末にcocoの試写会に当選して松竹試写室にて鑑賞。まさか当たるとは。

 

【あらすじ】主人公が最近できた彼氏と初体験をしたら「ごめん、君に”それ”をうつした。姿形を変えてゆっくり追いかけてくる、つかまったら殺される、とにかく逃げろ」と言われます。そしたら本当に色んなきもい人の形をしたものが所構わず追いかけてきて超怖い。

 

 とにかくポスターのデザインが最高で、一目見て「これ行きたい!」という思いのまま試写会に応募しました。ただ私はちょっと舐めてました。まさかこんなに怖いなんて聞いてないよ。

 

 ホラー映画というのは、だいたいのものがホラー以外の要素を含んでいます。よくあるのだとコメディとか。怖いけどげらげら笑える映画って多いですよね、ファイナルデッドシリーズとか、最近だとキャビンとかはそうかなと思います。この映画も要所要所で笑えるシーンが出てきますが、それは緩急をつけるためで作品がコメディ色を持っているわけではありません。

 私がこの映画を見てまず思い出したのは、ブライアン・デ・パルマの「キャリー」でした。キャリーは主役のシシー・スペイセクの外見もあり、不気味な雰囲気を持ついじめられっ子が実は超能力を持っていて、その力でいじめっ子たちを皆殺しにするホラー映画だというイメージが強いと思いますが、私にとっては青春映画です。

 イット・フォローズもキャリーも、一人の少女が女としての転換期を迎えたことで歯車が狂い始めるという点で共通していると思いました。キャリーは初潮を迎えたことで母親との関係、学校のいじめが悪化します。そしてイット・フォローズでは主人公が初体験を終えたその途端に、正体不明のそれの恐怖に追われるようになります。

 映画を見終わってからすぐに他の人の感想や映画ブログの記事を読んでみました。その中で多かったのはセックスで感染する"それ"はつまり性病のメタファーではないかというものです。確かに、そう言われるとそう見えてきます。でも、私はこの映画は若い女の子対して安易なセックスを諫める以外のなにかがあるような気がしました。

 ”それ”が何を示しているのか、もう一つ「死」のメタファーだという意見も目にしました。「死」はいつでもどこでも、ゆっくりと、でも確実に近づいてくる。逃げても逃げてもおいかけてくる、生きている物にとって絶対に逃れられないものです。

 そうかもしれないと思いつつ、でもそれではあまりにも直接的なのではないかとも思いました。それで色々と考えてみて、私なりに出した”それ”の正体は、主人公と同じくらいの年頃なら誰でも経験があることだと思いますが”正体不明の不安”です。

 自分だけが感じるのに自分でも正体が何なのかはっきり分からず、誰に話しても理解してもらえない、でも確実にすぐ側で口を開けていて油断すると飲み込まれてしまう不安。”それ”の姿がその時によって変わるのも、自分では不安の正体が掴めていないからではないかと思いました。

 逃げても逃げても、不安は追いかけてきます。解消するために色々な手を尽くし、一時は安心するけどでもまた新しい不安が襲ってくる。人によってなにに不安を感じるのかも違います。主人公はまだ社会的に大人になる前に体だけ大人の女へとなってしまったことに、強いてはセックスに不安を感じているから”それ”は淫らな女性だったり男の姿をしているのかなと思いました。

 とかまあ色々言いましたが、どうやら監督はメタファーとかそういんじゃないよ的な発言してるようなので、全部見た側の自己満でしたね。でも映画は見た人の経験とか考えてることによって感想や解釈が変わってくるものなのでいいんですよね。ホラー映画としても凄く怖いし、青春映画としても若い故の痛ましさとか、でも愛情溢れる描き方とか、見応えのある好きな映画でした。オススメ!