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この夏最大級の祭り「HiGH&LOW〜琥珀&九十九番外編:Maria徹底解剖〜」

 

 バイクも人間も換えはねぇ……命大事にしろよ」

 

 みなさん猛暑の中いかがお過ごしでしょうか。私と言えば時間の許す限り映画館に通いHiGH&LOWを観たり家でドラマを見返したり劇中曲をヘビロテして虚ろな目で口ずさんだりしております。

 今回も前回に引き続き琥珀と九十九について考えたいと思いますが、前回とは少し違う視点から考えます。みんな大好きなあの曲を私なりに深読み、歪曲しますのでどうぞお付き合いください。

 

 

 HiGH&LOWの魅力の一つがEXILEによるアガる劇中歌である。問答無用に耳から脳に直接注入される危ないお薬かなにかかってくらいアガる曲ばかりで本当に困っている。その中でも初めて聞いてから私の心を掴んで離さない一曲がある。そう、アルバムの最後に入っている曲であり、映画ではかからずドラマでも一度しか聞くことのできない伝説の曲、鷹村九十九役の青柳翔が歌う「Maria」だ。

 バラード調のため他の曲よりも耳につきにくいが、ドラマではかかる場面と相まって非常にエモーショナルでこちらの感情を揺さぶってくる。なぜこの曲がこんなにも聞く者の心を揺さぶるのかと言えば、それはこの曲が歌っている九十九の気持ちを劇中の本人よりも雄弁に語っているからに他ならない。それではこれからMariaの歌詞を細切れにしてこの曲がいかにヤバいブツであるか徹底的に解剖していこうと思う。

 

 

 タイトル:Maria

 歌:青柳翔(鷹村九十九:劇団EXILE

 

 「この胸の思いはいつも届かない

  溢れる思いはいつも踏みにじられ」

 (いつも言葉が足りない九十九らしい導入。九十九が言葉よりも先に拳を出してしまうのは過去に様々な悔しい思いをしてきたからか)

 

 「それでも生きていくことに精一杯

  誰にもわからない悲しみの叫びを……」

 (身寄りがなく、頼れるのは自分の力のみだった九十九の生き方を思うともうここで涙が禁じ得ない。誰にも理解されずたった一人で悲しみを抱え込みながら生きてきた)

 

 「夜の街歩けば暗闇に広がるカオス

  こんな世界に夢なんてあるのか」

 (夢も希望もない出口の見えない暗闇を歩き続けている九十九。このときはまだ自分の人生に光が差すなんて考えたこともなかっただろう)

 

 「声を枯らして足掻き続けた先になにがあるのだろう

  言葉にならないこの想いたちはどこへ消えていく」

 (もう涙で霞んで歌詞が読めない)

 

 「ここにいるよMaria教えてくれ 立ち止まることはできないから

  どこにいるのMaria教えてくれ 後戻りなんて今更できない」

 (Mariaーーー!!九十九のMariaはどこにいるんだーーー!!早く見つけてあげてーーー!!)

 

 ここまでが一番となる。天涯孤独な九十九がどういった思いを抱えて生きてきたのかがよく伝わってくる。この歌詞で分かるのは九十九が自分で孤独を選んで生きていたわけじゃないということだ。九十九は常に自分の理解者、または暗闇から抜け出すきっかけを探していた。その方法が分からず自棄になって暴力に訴えていただけで、彼がむやみやたらに振り回していた拳は言葉にならない言葉だったのかもしれない。

 

 「口元に灯す火が顔を照らせば

  白く浮かぶ煙は誰も消せない」

 (ここにきて「暗闇」と対になる「灯り」というワードの出現。九十九の心境に何らかの変化が伺える。煙草の煙のように九十九の中に揺らめくものが生まれた)

 

 「孤独の片隅優しさを感じるその時

  微かな不安がよぎってゆく」

 (あーーー!出会った!琥珀と出会った!!神田川かよ!?ただあなたの優しさだけが怖かったのかよ!?今まで感じたことのなかった優しさに触れてそれを失うことを考えて不安になっちゃのかよ!?罪深い!!)

 

 「どうして俺たちはこの宿命(さだめ)に導かれるのか

  いつから俺たちはこの痛み感じないふりしてる」

 (主語が「俺たち」になった……だと……)

 

 「苦しいよMaria答えてくれ いつかは報われるだろうか

  抱いてくれMariaこの心を ただお前だけを信じて生きてる」

 (Mariaーーーーーーー!!!!抱いてーーーーーーー!!!)

 

 これ以降の歌詞は繰り返しになるので省略する。一番と二番を比べると九十九の心境が一人の誰かとの出会いによって大きく変化しているのがよく分かる。最初はぼんやりとしていたMariaという存在。それが九十九の中ではっきりとした姿を持った。そう、琥珀である。

 一人で暗闇をさまよっていた九十九の前に琥珀が現れ、あっと言う間に九十九を闇から光の世界へと引き上げてしまった。生まれてこの方初めて自分に優しさをくれた存在、Maria、それは琥珀だった。

 だがここで全て解決とはならないのが長年の孤独が染み着いてしまった九十九のやっかいなところでもある。九十九にとって琥珀はただ一人の存在であるが、琥珀にとって自分は仲間の中の一人であって特別な存在ではない、だからその優しさに期待しすぎてはいけない。そう考えているのかもしれない。でもいつか報われたい。この気持ちが届けばいい。苦しい、苦しいよMaria、抱いてくれMaria、ただお前だけを信じていきてるんだMaria……。

 

 私はこの曲がiPodから流れてくる度に頭を抱えてその場から動けなる病気にかかってしまった。九十九が琥珀を思う気持ちが痛いほどに伝わってくる。これを歌っているのが九十九自身であるということ、青柳翔の演技中では想像もつかない甘い歌声と相まってもうどうにでもしてくれという気持ちになる。どうにでもしてくれMaria。

 

 それでは最後に、この曲を歌ってくれた青柳翔さん。そして作詞作曲をしたATUSHI(!?)に最大限の敬意を表してこの記事を終える。

 ATUSHIが作詞作曲ってマジかよ。こんな歌詞が書けるなんてただ者じゃねぇよ。ATUSHIこそ琥珀&九十九の最大手なんじゃないのか。ありがとうございます。新刊も楽しみにしてます。